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13560. Mrs. Harris Goes to Paris
お名前: 杏樹
投稿日: 2023/3/12(17:04)
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かな~りお久しぶりです。
前にGR読んでいたという投稿をしたきりですね。
GRは読んでしまって、他の本をいくらか読んだのですが、日本語の本を読むことが多くて外国語の本はあまり読んでいなくて語数が進んでいません。
さて、今回紹介したい本があるので投稿しようと思いました。
前まで単独で本を紹介しようと思ったら「本のこと、なんでも」の掲示板に投稿していたんですが、ほかの掲示板はバッサリ「過去ログ」行きになったのでこちらに書きますね。
Mrs. Harris goes to Paris
by Paul Gallico
ポール・ギャリコは「スノー・グース」や「ジェニイ」や「ほんものの魔法使い」で有名な作家です。映画「ポセイドン・アドベンチャー」の原作者でもあるらしい。
最近映画化されたそうでこの本が日本語版でも再版されたそうです。「ミセス・ハリス パリへ行く」というタイトルです。それで読みたくなったんですが、だったら原書で読んだらええやん、と思って原書を探しました。
ミセス・ハリスはロンドンに住んでいます。夫を亡くして以来家政婦をして暮らしています。通いでいくつかの家で家事をしています。ある時雇い主のクローゼットにとっても素敵なドレスがあるのを見つけました。雇い主が言うにはパリで仕立てたディオールのドレスだということ。それも2着あって、これから出かけるのにどちらのドレスがいいかしら~なんて言っています。
ミセス・ハリスはそのドレスにすっかり心を奪われてしまいました。そうしていつかパリへ行ってディオールのドレスを手に入れたい…と思うようになりました。
そうしてやっとのことで3年かけてお金を貯めてパリへ行きます。それも日帰り航空券で、ディオールの店へ行って、ドレスを買ってすぐ帰る…という予定で。
そして空港からタクシーでディオールの店へ直行したら、ミセス・ハリスの風貌を見たお店の人に冷たくあしらわれます。しかも店内にはドレスがみあたらない。
この作品が書かれたのは1958年。その当時はブランドのドレスといえばオートクチュール。既製品はないのです。ミセス・ハリスはやっとのことで本気でドレスを買いに来たということをわかってもらえましたが、ドレスを買いたいなら午後から「コレクション」があるのでその時間にいらっしゃい、「コレクション」でモデルが着たドレスを見て気に入ったものを指定してくださいということになりました。
そして気に入ったドレスを見つけて指定したら…採寸して、縫製して、仕立てに1週間かかると言われました。
…1週間もパリに滞在するお金なんかないー!
ショックを受けるミセス・ハリスに救いの手が…。
ディオールのドレスを目指して猪突猛進で進むミセス・ハリスのパワーもすごいんですが、ミセス・ハリスに感化されていくディールのお店の関係者のみなさんとの交流がとても素敵です。
ちょっぴり悲しい物語の行方にも、最後のサプライズで心が温まるような気持になりました。
それで、ミセス・ハリスの言葉がものすごい下町なまりです。「マイ・フェア・レディ」のイライザみたいな言葉です。まずHが落ちます。自分の名前まで「Mrs. 'Arris」です。Hは全部「’」になってる…。
さらに「エイ」という発音が全部「アイ」になります。「マイ・フェア・レディ」に「Rain in Spain」というナンバーがありますが、これは「レイン」が「ライン」になる、という風に「アイ」の発音を治すために練習するナンバーです。「ai」が「y」という表記になっているので、それで「アイ」という発音を表しているらしい。
さて、このお話はシリーズになっていて続きがあります。
Mrs. Harris Goes to New York
パリに行くのもやっとのミセス・ハリスがミューヨークへ??
ミセス・ハリスの隣に住むGusset夫妻(どう読むかわからない)のところにヘンリーという男の子がいて、いつも殴られています。ヘンリーの本当の父親はアメリカ人の兵隊で、イギリスに来た時にロンドンのウエイトレスと恋に落ちて結婚して生まれた子供です。父親はアメリカに帰ってしまい、母親は3歳の時に、6人の子供がいるGusset夫妻にヘンリーを預けました。母親はしばらく仕送りをしていましたが、3年後、他の男性と結婚してどこかへ行ってしまいました。
ミセス・ハリスはいつも隣からヘンリーがぶたれて泣いている声を聞いて心を痛めています。Gusset夫妻のところには父親から来た手紙がありました。夫妻は手紙を送ったことがあるということですが、あて先不明で返ってきました。
でも名前も、かつて住んでいたところもわかっています。アメリカへ行けば探せるかもしれません。父親を探し出して、ヘンリーを引き取ってもらえたら…。
でもどうやってアメリカへ行けばいいのでしょうか。
さて、ミセス・ハリスの雇い主にアメリカ人のシュライバー夫妻がいます。夫は映画関係者で、ニューヨークに帰ることになりました。シュライバー夫人は今まで何人もの家政婦を使ってきましたが、ロクな人がいなくて、ミセス・ハリスが来てくれるようになってやっと安心して家のことを任せられるようになりました。それがニューヨークになんか行って、新しい家政婦を見つけられるのでしょうか。ミセス・ハリスが来てくれたらいいのに…。
ということで、ミセス・ハリスとシュライバー夫人の思惑が一致して、一緒にニューヨークへ行くことになりました。
それで、この時代はまだ船なんですね。そこでミセス・ハリスは子供連れの乗客に紛らせてヘンリーを船に乗せてしまうのです。
ニューヨークに着いて、ヘンリーはどうするの?どうなるの?という事態を招いて困ったことになります。
それでもミセス・ハリスはヘンリーのお父さんを探すために頑張ります。お父さんの名前はジョージ・ブラウン。名前がわかっているから簡単だと思ったら、ニューヨークだけでも同じ名前の人がゴマンといる!
で、結局最後は心温まるお話になります。
それにしても、ポール・ギャリコ、アメリカ人男性なのに、どうしてこんなにロンドンの家政婦の気持ちをリアルに描けるんでしょう。また「ジョージ・ブラウン」を探してニューヨークのありとあらゆる所に行くんですが、ミセス・ハリスが見たニューヨーク各地の様子も丁寧に描かれています。周りの人たちもですが、おとぎ話かと思うような展開でも生きているリアルな人間の気持ちや感覚が描けているんですよ。特にニューヨーク編の最後に描写されるミセス・ハリスが暮らすロンドンの下町の日常生活がとても細やかでリアルで、そうした日常生活がいとおしく感じられます。
このシリーズ、さらに2作あるらしいので、さらに読んでみたいです。
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