Dan Brownを一気にご紹介

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13493. Dan Brownを一気にご紹介

お名前: wkempff
投稿日: 2019/2/7(21:18)

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なにか私だけが投稿しているようで恐縮ですが、予告どおり、Langdon教授シリーズを一気にご紹介します。

Dan BrownのLangdon教授シリーズは、最新のOriginまでに5冊刊行されており、すべてベストセラーになっています。玄人筋には評判の悪い小説で、最大のベストセラーであったThe Da Vinci Codeは、爆発的に売れる前は冷笑酷評の嵐でした。売れてからも欠点をあげつらう本が刊行されたりしたらしいですね。
しかし、数年に一冊出版されるシリーズものがすべてベストセラーになるのはたいしたもので、何か、読ませる力があるんだろうと思います。

特徴は、
・Langdon教授(HarvardのSymbology, Iconologyの教授)は中年独身で、水泳で鍛えておりハンサム。事件に巻き込まれ、公権力に負われ、妙齢の女性と手を取り合って逃走しながら事件を解決する。
・筋書きは二転三転、正直に言うと、無理やり捻って混乱させるような印象がある。
・壮大なテーマが取り上げられるが、知りつぼみに羊頭狗肉的に終わる。
・宗教や美術に関する薀蓄満載。ときに最新鋭の物理の薀蓄もあり、語彙レベルが高い。(しかし、だんだんと文中で単語がさりげなく解説されるようになってきた)。逆に英文は明快で紛れの少ない文章。
というところでしょうか。

Angels & Demons
YL 9.0、お薦め度★★★★★、ドンデモ度★★★☆☆、観光名所度★★★★☆
Jargon(マニアックな宗教、美術、歴史、科学などの専門用語)度★★★★★
2000年
舞台:CERN、Vatican(サン ピエトロ大聖堂、システィーナ礼拝堂)、パンテオン、など
テーマ:ローマ法王選出をめぐる陰謀、反物質

CERNの上級研究員が所内で殺害され、その胸には紋章が焼き付けられていた。CERNには巨大な破壊力を持つ「反物質」の合成に成功したが、同時に盗み出された。LangdonはCERN所長の要請でCERNに赴き、紋章が秘密結社Illuminatiのものであることに気づく。Vaticanでは、新しい法王を選出する選挙(Conclave)の最中であったが、Illuminatiと思われる敵は、反物質を使ってヴァチカンを脅迫し、法王の有力候補4人を誘拐、次々と殺害していく。
Langdonは、殺害されたCERNの研究員の娘Vetraとともに、反物質の捜索と枢機卿救出に奔走する。

トンデモ度に関して、反物質は実際に存在します。たとえば癌検診に使われるPETは、電子の反物質である陽電子(ポジトロン)を使った診断です。しかし、ここに書かれているような爆発的破壊力を持たせることは現在は不可能です。

文句なくお薦めする小説、もしかしたらDan Brownの小説の中で最高かも知れません。しかしながら語彙レベル非常に高く、宗教や美術のみならず物理学(高エネルギー物理の実験)の知識が無いと辛いと思われる部分もあります。

The Da Vinci Code
YL 8.5、お薦め度★★★★☆、ドンデモ度★★★★★、観光名所度★★★☆☆
Jargon度★★★★☆
2003年
舞台:ルーヴル美術館、ウェストミンスター寺院、テンプル教会、ロスリン礼拝堂、等
テーマ:キリスト教の裏面史、ダヴィンチの絵に隠された暗号、女性崇拝

ルーブル美術館長ソニエール殺害の嫌疑をかけられたLangdonは、ソニエールの孫娘で警察の暗号解読官Neveuの手引きで逃亡。ソニエールの残した暗号を手掛かりにキリスト教の根源をゆるがす聖杯(Holy Grail)追い、カトリックの裏面を目の当たりにすることとなる。同時に、彼らは警察のみならず秘密結社Opus Deiやシオン修道会に追われることになる。聖杯伝説とは、そして、最後の晩餐に込められたDa Vinciの暗号とは。

宗教的トンデモ度は相当のもので、Opus DeiはVatican公認の敬虔な宗教団体であるにもかかわらずカルト集団のように描かれ、また、実在のテンプル教会やロスリン礼拝堂もカルトのアジトのように描かれました。
語彙レベルは低くありませんが、前作Angels & Demonsに比較すると少しおだやかになっています。

The Lost Symbol
YL 8.5、お薦め度★☆☆☆☆、ドンデモ度★★☆☆☆、観光名所度★☆☆☆☆
Jargon度★★☆☆☆
2009年
テーマ:ワシントンDCに深く眠るフリーメーソンの秘密。認知科学。

Langdonは、スミソニアン博物館長で結社Masonの幹部であるPeterに、米国連邦議会議事堂(US Capitol)内で講演を依頼される。しかし、現地に行くと、講演はまったく予定されておらず、かわりにPeterの切断された手首が置かれていた。
Peterの妹Katherinは認知科学者(Noetic Scientist)でスミソニアンの地下に研究室を持ち、人間の意志と物質の関係で大発見を成し遂げようとしていた。
誘拐されたPeterのみならず娘のKatherinの研究も破壊すべく、katherinにも魔の手が迫っていく。
なぜかCIA幹部に疑われ逮捕されそうになったLangdonは、Katherinとともに、迷路のような博物館を逃走することになる。

大ヒットのThe Da Vinci Codeの後ですので、作者は相当に苦労した形跡があり、何度かの出版延期の後、6年後に出版されました。

Da Vinci Codeで懲りたのか、ここではMason(フリーメーソン)は、秘密結社ではなく友愛あふれる穏健な組織として描かれています。
逆に物理学的薀蓄は相当にトンデモで、超弦理論や量子もつれなど最新の物理学用語が頻発しますが作者自身全く理解していないのがよくわかります。
また、なにか冗長感のある小説でLangdonシリーズの中で人気が無いのも理解できます。

Inferno
YL 8.0、お薦め度★★★☆☆、ドンデモ度★★☆☆☆、観光名所度★★★★★
Jargon度★★★☆☆
舞台:
フィレンツェ:ヴェッキオ宮、ポーポリ庭園、ヴァサーリの回廊とヴェッキオ橋、フィレンツェ市役所、大聖堂(ジョットの鐘楼、サン・ジョバンニ洗礼堂)
ベネチア:サンマルコ広場、サンマルコ大聖堂
イスタンブール:地下宮殿
テーマ:ダンテの「神曲」、人口爆発。

Langdonはフィレンツェの病院で目覚めるが、彼にはボストンのハーバード構内を歩いていた記憶しかなかった。しかし、病室で謎の殺し屋に襲われて、担当の女医Shienaとともにフィレンツェの史跡内を逃走。Langdonは、狂人の生物学者の陰謀に気づくが、Langdon警察やWHOに追われ、フィレンツェからベネチア、イスタンブールへ向かう。

フィレンツェの観光名所の描写、それも、観光に訪れても入りたくて入れない場所をうまく描写していて、観光案内小説としては最高です。美術や宗教に関する薀蓄が語られますが、Angels & DemonsやThe Da Vinci Codeに比較して、文中でさりげなく解説される配慮がなされており、相当に読みやすくなっています。

Origin
YL 8.0、お薦め度★★★☆☆、ドンデモ度★☆☆☆☆、観光名所度★★☆☆☆
Jargon度★☆☆☆☆
舞台:モンセラット山岳寺院、グッゲンハイム現代美術館、サグラダファミリア、スペイン王宮
テーマ:科学と宗教の相克。AIの進化と暴走。
卓越したIT研究者で起業家大富豪のKirschは、スペインを代表する近代建築であるBilbao’s Guggeheim Museumで自説を発表しようとします。Kirschは、「人類はどこから来てどこに行くのか」という根源的な問いを完全に解き明かし、宗教と科学の軋轢に終止符を打つ、といわれました。プレゼンのしかし、壮大な導入部の後、本論にはいる直前、Kirschは凶弾に倒れます。
Guggenheim MuseumのDirectorは妙齢の女性Ambra Videlで、彼女は、スペインの皇太子Julianと婚約したばかりでした。しかし、Kirsch暗殺の後、Ambraはなぜか皇太子との連絡を拒否し、セキュリティガードを欺き、Langdonに逃走の補助を懇願します。
この二人の逃走を助けたのが、AIであるWinstonで、Kirschのスマホを通して指示を与え続けます。

スペインの名所には興味がありますが、前半の美術館はモダンな近代美術館で、ちょっと個人的にはがっかり。サグラダファミリアの内部はもう少し描いてほしかったですね。

ということで、Langdon教授シリーズ、何が面白いんだかよくわからない、混乱している、と思いながら、なんとなく、新作が発売されるとそわそわして、結局読んでしまいます。
ファンになってしまった、と正直に告白します。


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