[掲示板: 100万語超 報告・交流 -- 最新メッセージID: 13567 // 時刻: 2024/12/28(12:55)]
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ということで、100冊を祈念し? Gradedでない洋書に最初にチャレンジする方におすすめの小説をあげてみます。
いずれも、英米本国でも評判の高い傑作です。
ついでに、こりゃいかん、という難読(もちろん、私にとって、です)も紹介しますので、チャレンジャーの方はぜひお読みになってください。
読みやすさベスト1
The Lock Artist, by Steve Hamilton
エドガー賞長編賞、バリー賞ダブル受賞の傑作。
幼少期のトラウマから声を失った青年が、恋人と家族を救うために、凄腕の金庫破りになり、犯罪を重ねていきます。
クライムものでありながら青春小説のようにさわやかな気分になります。
Big Words を使わず、短文を畳み掛ける独特の文体ですが、日本人には非常に読みやすいです。
読みやすさベスト2
Ordinary Grace, by William Kent Klueger
これもエドガー賞受賞作品。
ミネソタの田舎に暮らす牧師一家をを襲う悲劇と、家族愛隣人愛で悲劇を乗り越える人々を描く、涙なしに語れない感動的な作品。悲劇の原因を追うミステリーの要素もありますが、むしろ純文学と考えたほうがいいでしょう。
ヘミングウェイのような流れる英文で、流れに乗ると非常に読みやすいです。13歳の少年の視点で描かれており、語彙レベルは高くありませんが、自然描写が豊富なので、この点だけは多少の慣れが必要です。
読みやすさベスト3
Not A Penny More, Not A Penny Less, by Jeffrey Archer
現代を代表するストーリーテラーArcherのデビュー作。北海油田詐欺にひっかかって大金を失った、数学者、医師、画商、貴族の4人が、詐欺師の頭目をだまし返し、大金をそっくり取り戻そうとします。悪党を含め登場人物がみな人間的であり、結果として不幸になる人間も生じず、騙しあいにはらはらどきどきしながら安心して読めます。
Archerの英文は変に凝ったり持って回ったところが無く、また正統的Queens Englishですので、たいへん読みやすいです。またこの小説は長さも適当で一気読みにも最適です。
多読を推奨している評論家、文筆家の渡辺由加里さんは、この本で多読や一気読みに目覚めたそうです。
読みやすさベスト4
The Girl on the Train, by Paula Hawkins
アル中でヨレヨレ、友人宅に身を寄せる中年女性は、見栄から、ロンドンへの通勤を装って毎日電車に乗っていました。ある日、美男美女夫婦がすむ線路脇の家で浮気現場を目撃することから、主人公は徐々に犯罪に巻き込まれていきます。アルコールで記憶が飛び、自分が何をやったのか、犯罪を犯したのかもよくわからない、という恐怖が主人公に迫ります。
大ヒットのサイコスリラーで映画化されました。ストーリーは複雑ですが、英語は信じられないほど簡単で、Graded Readerを読んでいる感覚を覚えます。
読みやすさベスト5
The Firm, by John Grisham
これは、多読を志す人の必読書のようになっていますね。ハーバードの秀才ルーキーが高給高待遇に目がくらんでマフィアの手先の法律事務所にはいってしまい、奇想天外な方法で脱出をはかります。法廷シーンはありませんが、マネーロンダリングのプロセスなどベーシックな法律用語が必要となるところがあります。
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さて、読みにくさ編です。最初の2作は、たぶん、誰が読んでも(Nativeが読んでも)読みにくいでしょう。あとの作品は普通に教養あるNativeならなんということはない作品です。
読みにくさベスト1
A Brief History of Seven Killings, by Marlon James
ブッカー賞受賞作品。私は、ついに読めずに放り出しました。ジャマイカの国民的英雄であるレゲエ歌手の殺人未遂事件を軸に、ジャマイカの血塗られた歴史を語っていきます。語り手の数は50人を超え、それぞれ、本筋に関係あるのかないのかわからない長広舌がグダグダと続きます。また、基本的にジャマイカ英語ですので、正しい英文法で書かれた部分はほとんどないと言っていいでしょう。(ジャマイカ人から言わせると、英米の文法教科書の文法が正しいと誰が決めたんだ、ということになるのかも知れませんが)。ジャマイカでは英語は独自の発展をとげ、正統的な英語とはずいぶん異なる英語になっています。しすて、それぞれの語り手のバックグラウンドを反映してそれぞれに別のジャマイカ英語になっています。
ブッカー賞史上歴史に残る大傑作、という評価もあるようなので、チャレンジャーは是非。もし読まれた方がおられたら、感想を聞かせていただきたく。
読みにくさベスト2
The Luminaries, by Eleanor Catton
これもブッカー賞受賞作品です。超長編ですが、私は、意地で読み通しました。1850年代、ほんの数年続いた、ニュージーランド南島の漁村Hokitikaの喧騒と人間模様。Hokitikaは人口500人程度の静かな漁村でしたが、たちまちに5000人に膨れ上がりました。
12人の人物(それぞれ星座に対応づけられています)がHokitikaの3つの事件について語り、それぞれ虚実織り交ぜ、時系列もバラバラ、何が本当で何が嘘か、読者はまったくわからなくなってきます。そして、後半には、マジックリアリズム的な超常現象も現れる。
ビクトリア朝の小説を模した大仰に回りくどい表現で、古語がふんだんに使われ、読みにくいことこの上ないです。しかし、最後にすべてのピースがぴたりとはまるように構成された、驚くほど複雑に精密に設計された小説です。その構成の人工臭と読みにくい英文で、しばしば酷評にさらされています。
私は、苦労したけれど、結構楽しんだんですよね。ゴールドラッシュ、ニュージーランドの入植者とNativeとの関係、入植者の仲の貴族(似非貴族?)と華僑との関係、など、個人的に興味があるので。
ここからは、作品のせいではなく、単純に私の英語力の問題で読みにくかっただけです。
読みにくさベスト3
Atonement, by Ian McEwan
イギリス現代文学史に残る傑作といわれます。
ロンドン郊外、1930年代に開催されたパーティで少女がついた些細な嘘が、その後の一家の運命を大きく変えていきます。少女の贖罪とは?
登場人物にいまひとつ共感できなかったことも、読みにくく感じた一因でしょう。
読みにくさベスト4
Farewell My Lovely, by Raymond Chandler
1940年の作品。現代ではあまり使われない表現が多く見られます。また、Chandlerは記述が直接的でないことが多く、禅問答のような会話から話を展開するようなところがあるんですね。ハードボイルドの人間像をつくりあげたともいえるPhilip Marloweの原型があります。文句無くおすすめします。
読みにくさベスト5
Live by Night, by Dennis Lehane
Mystic RiverやShutter Islandなどで有名なLehaneのギャングもの。禁酒法時代(1929年~)を舞台にしているので、現代では見かけない単語も多く使われます。しかし、ギャングの会話はダイレクトな表現が少なく、これが理解を難しくしています。Lehaneは名文家の誉れ高いのですが、その他の作品も若干難しく感じます。
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