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お名前: 杏樹
投稿日: 2005/9/4(00:23)
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みなさま、お元気でお過ごしでしょうか。
中国語150万字の後、英語の本を一気にだーーーっと読みました。おかげで世界史クラブの報告も、今までになく間隔の短い報告になりました。
さて、今回はアメリカ史特集になりました。別に狙ったわけじゃないんですが…。
まず今回のイチオシは
「American Girls」シリーズです。
これはアメリカ史の中で8つの年代を設定して一人の少女を主人公にして、それぞれ6冊のお話にまとめたものです。6冊の内容はすべての年代に共通したテーマを設けており、年代別に読むのが基本かもしれませんが、同じテーマの本を年代別に読むこともできます。
まず私が読んだのは1934年のシリーズ。アメリカで一番興味のある年代だからです。そうしたら、ちょうど1929年に大恐慌が起こったため、不況がテーマになっていました。
読む前は女の子向けのかわいいお話のシリーズを想像していたのですが、不況という現実がずっしりのしかかってくる、かな〜りシビアなお話で驚きました。また、最後にはその時代、テーマに合わせた歴史的背景の説明もあります。ここまで深刻な現実を、子供向けの本で書くか?と思うぐらいシビアで、驚きました。
「Meet Kit」
Kitはタイプライターで今日の出来事を書いて「新聞」を作っています。毎日お父さんが帰ってくると見てもらうのが楽しみです。KitにはBest FriendのRuthieがいます。二人はおかあさんたちがお茶を飲みながら失業した人のうわさをしているのを聞きます。
しかしついにKitのお父さんも失業してしまいます。これからどうやって暮らしていけばいいのでしょう?
最初の巻はintroduceの役割を果たします。主人公のおかれている時代、境遇などの設定が語られます。
「Kit Learns A Lesson」
2冊目は学校生活がテーマです。
お父さんは相変わらず仕事が見つかりません。
Thanksgiving Dayが近づいてきて、学校では飾り付けが行われます。そんな時絶対いるのが邪魔をする意地悪な男の子。お父さんの失業のことまで言われて、Kitはカッとなって彼を突き飛ばし、飾り付けを台無しにしてしまいます。Kitや一緒にいた子達は罰として、失業者に食べ物を配っているsoup kitchenへ手伝いに行くことになります。そこにはたくさんの失業者が行列をしていました。Kitがそこで見たものは…。
巻末の説明も、容赦のない不況時代の学校の様子が書かれています。先生も失業したり給料をカットされたり、大変だったようです。
「Kit's Surprise」
3冊目はクリスマスです。
お父さんが失業しているため、いつもの年と同じようなクリスマスパーティーは望むことができません。おかあさんは電気代の支払いに悩んでいます。Ruthieは自分のドレスとバレエのチケットを持って、Kitに一緒に行こうと誘います。しかしKitは施しを受けるのがみじめになって、それをRurhieに付き返して二人は絶交してしまいます。
しかもお母さんの代わりに偏屈なUncle Hendrickのところへお手伝いをしに行くことになってしまいます。初日からおじさんはえらそうに命令してKitにつらく当たります。普通こういう設定だと、Kitが一生懸命世話をして、偏屈なおじさんの心も和らいで…という展開を期待しますが、ぜんぜんそんなことにはなりません。それどころか、このままだと家まで出て行かなくてはならないかも…という事態になります。そしてクリスマスイブがやってくると、ますます悲惨な事態に…。
しかし最後は感動しました。悲惨な境遇だからこそありがたく思えるもの…そんな発見がありました。
巻末の説明では、サンタクロースに「お父さんに仕事をください」とお願いする子供がいたとか…。手作りのプレゼントもはやったそうです。
「Happy Birthday kit!」
お父さんが失業中なので、誕生日パーティーやプレゼントも期待できません。そんな時、KitのところにAunt Millieがやってきました。Aunt Millieは「かしこくたのしい節約生活術」をKitの家に伝授します。上手な廃品利用をして、庭に野菜を植え、鶏を飼って卵を売り、なんでも手作りの生活。Kitはそんな生活を楽しむ一方、学校ではそんな生活をしていることを隠していました。
「Kit Saves the Day」
5冊目は危険に遭うのがテーマのようです。
不況でホームレスが増え、そういった人たちの中にはよその家を訪ねて何か手伝うことはないか聞いて、ささやかな報酬や食べ物を得ることもありました。Kitの家にもそういったホームレスの少年Willがやってきます。お手伝いをしてもらった後、KitはWillが他のホームレスたちと森にいるというのを聞いて森へ食べ物を持って行きます。そこでKitは子供をつれたおかあさんまでいるのに衝撃を受けます。さらにKitは貨物車にこっそり乗って移動するというWillについていってしまいます。しかし貨物車に乗っているのを見つかって捕まってしまいます。
後半はどうやって助かるか、ハラハラドキドキの展開で、必死に読んでしまいました。
「Changes for Kit」
あのUncle Hendrickが足と手を怪我して、Kitの家で面倒を見なくてはならないことになり、さあ大変!おじさんはKitに好き放題に命令をします。その中でも耐えられないのは、新聞への投書の代筆でした。書式やつづりに厳しいのはもちろんですが、失業者を怠け者扱いして、政府の失業者対策を批判する投書を代書するのはKitにはつらいことでした。不況のためにみんなつらい思いをしているのに、どうしておじさんはわかってくれないのか…。しかしKitはある方法を思いつきます。
私が面白いと思ったのは、おじさんは最後までガンコじじいだったことです。最後はみんなわかりあってめでたし、めでたし、ではなく、あくまでも意見の違う人がいるものだということが表現されていることです。
とにかくこのシリーズを読んで驚いたのは、厳しい現実を容赦なく描き出していることです。Kitは最初、いつかお父さんが仕事を見つけて前と同じ生活が戻ってくることを夢想していますが、やがてそんな日は来ないことがわかってきます。そして不況のつらい現実が次々と襲ってきます。だからこそKitの境遇にリアル感があり、それを乗り越えていく姿に絵空事ではない真実の感動を覚えることができるのです。つらい境遇になったからこそわかったことがあり、それによってKitが成長していくのが実感できました。特にこのKitのシリーズは、女の子向けの本だと思って敬遠している男性の方にもお勧めできます。
ただ、不況だ何だと言いながら、日本の昭和初期の生活と比べてみると、Kitの生活はかなり豊かな気がします。
で、このシリーズはみんなこんな調子なのかと思って、ひとつ時代をさかのぼってみました。
1904年、Samanthaのシリーズを読みました。Kitはバラで買いましたが、ボックスセットがあるのを知ってこちらはボックスで買いました。1冊のコンプリもあるらしいですが、かなり分厚くて持ち歩きには向かないのではないかと思います。
そうしたら、kitほど厳しくはありませんでした。この時代は時代全体がもっとのどかだったようで、そういった時代の雰囲気も影響しているのかもしれません。
「Meet Samantha」
Samanthaは小さいときに両親を亡くしておばあさまと暮らしています。おばあさまはSamanthaが立派なレディになることを望んでいます。かなり裕福なおうちのようです。使用人もいます。SamanthaにはUncle Gardというステキなおじさまもいます。おじさまは自動車に乗ってやってきます。おばあさまは自動車の騒音に眉をひそめますが、おじさまは「今は1904年なんだよ」と言います。
Samanthaは隣に新しい女の子がやってきたのを知ります。お客様かと思ったら新しい使用人でした。Nellieと言います。同じぐらいの年の子が働いていると言うことでSamanthaは驚きます。しかもNellieは学校へ行ったことがないというのです。
あるとき使用人の一人でいつも洋服を作ってくれるJessieが突然いなくなってしまいます。Samanthaは心配してついにこっそり家を出て彼女を探しに出かけます。そうしたら、Jessieは黒人なので黒人居住地にいました。Samnathaはそういった境界線があることも初めて知りました。
「Samantha Learns a Lesson」
SamanthaはPrivate Schoolに通っています。そこは両家に子女の集う学校です。巻末の説明によりますと、生徒はごく少数でまさしくPrivateな学校でした。(紐に吊られて水泳のレッスンをしている写真がおかしい!)
一方Nellieは雇い主の好意でPublic Schoolに行くことになります。今まで学校へ行ったことがないので2年下のクラスに入ります。それでも勉強がわからなくて困っているのを見て、SamanthaはNellieに勉強を教えることにします。
さらにSamanthaはNellieが以前働いていたと言う工場での話を聞き、その実態に驚きます。
「Samantha's Surprise」
Samanthaは学校の友達からとってもきれいなクリスマスパーティーの招待状をもらいます。もうすぐクリスマスなので、家でも飾り付けをしたり、プレゼントを選んだり、楽しい計画にワクワクしています。しかしクリスマスが迫ったある日、Samanthaはおばあさまからその日は家にいるように言われます。大事なお客様を迎えるからと言うことです。しかもSamanthaが飾り付けをしようとするとメイドにじゃまされたり、楽しいはずの計画がどんどんこわされていきます。
巻末には当時の華やかなクリスマスの様子が紹介されています。ディナーのセッティング、クリスマスツリー、あふれるプレゼント…。不況の1934年とはえらい違いです。
「Happy Birthday, Samantha!」
Uncle Gardが結婚して、Samanthaには新しい親戚ができました。双子のAgnesとAgathaです。この二人や学校のお友達と楽しい誕生日パーティーが行われます。しかしお隣のイタズラ少年にパーティーを台無しにされてしまいます。AgnesとAgathaはSamanthaをなぐさめて、自分たちの家があるニューヨークへ来るように誘います。初めて見るニューヨーク。ビルが立ち並び、人が行き交い…。その中でSamanthaは女性の選挙権運動の集会があるのを知ります。おばあさまはそういった人たちを軽蔑しているようですが…。
「Samantha Saves the Day」
Samanthaは夏休みに一家でPiney Pointの別荘へ出かけます。AgnesとAgathaも一緒です。別荘でSamanthaは屋根裏で両親の残したものを見つけます。そこでSamanthaはAgnesとAgathaと一緒に両親の足跡をたどるために湖の向こうにある島にボートに乗って漕ぎ出します。しかしその島を探検して日が暮れてくると、天気が悪くなって、湖が荒れてきます。
巻末には当時のアウトドアでレジャーを楽しむ様子が紹介されます。
「Changes for Samantha」
Samanthaはニューヨークのおじさんのところで暮らしています。ある日Nellieがニューヨークに来るという知らせを受け取ります。Samanthaは再会を楽しみにしますが、Nellieはなかなかやってきません。いったいNellieはどこへ行ったのか…。
途中貧しい人のアパートや冷酷な孤児院の実態などが描写されますが、ラストは甘すぎ。
Kitシリーズに比べてこんなご都合主義でいいのかと思っていたら…。
このシリーズはKitと装丁が少々異なっておりまして、巻末には次号予告がついています。Kitにはありません。6巻目だから予告はないだろうと思っていたら、ちゃんと予告が!続きがあるのかと大あわてて購入。どうやら番外編のようです。
それは…
「Nellie's Promise」
今回の主役はNellieです。Promiseとは、Samanthaの6巻にすでに示されていることです。Nellieはその約束を果たすために悩んだり苦しんだりしながらがんばります。そしてやがて自分の進むべき道を見つけます。ここではアメリカにやってくる移民たちのためのSettlement Houseの様子も紹介されます。
「Changes for samantha」があまりにもご都合主義な終わり方をして「なんだかな〜」と思っていただけに、この巻があって本当によかったです。Samanthaのシリーズを読んだ人はぜひこれも読んでください。
しかし他のシリーズにもこういった番外編があるのでしょうか?Kitシリーズには予告がなかったし、どうやったら番外編があるかどうか調べられるのでしょうか?
その他のシリーズは
1764年
主人公はネイティブ・アメリカンのKaya
1774年
アメリカ独立前夜、植民地の少女Fericity
1824年
ニューメキシコ、ヒスパニックのJosefina
1854年
フロンティア開発時代の少女Kirsten
1864年
南北戦争時代、黒人のAddy
1944年
第二次大戦、Molly
第二次大戦下のアメリカ人は当時の日本人とどれだけ違う生活をしていたか、これを読むと面白いかもしれないと思っています。
このシリーズのYLは3.5〜4ぐらい。レベル3を読みなれてから読んだほうがいいと思います。もちろん興味があればキリンもどうぞ。
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さて、次はぷーさんが多読通信で紹介してくれたCornerstones of Freedomのシリーズです。
アメリカ史の重要ポイントを紹介する本です。写真や図版が豊富で語数も少なめですが、レベルは3.5〜4ぐらいではないかと思います。
「The Underground Railroad」
まずこの本が入りやすいのではないかと思います。
1820年に生まれたHarriett Tubmanは黒人奴隷として働いていました。あるとき彼女は主人の投げた鉄の塊が頭に当たり、後遺症が残ります。29歳になったとき、彼女は売られることになり、主人の元から逃げ出します。
そんな彼女を助けたのは「Underground Railroad」と呼ばれる、南部の黒人を北部へ逃がすシステムでした。このroadはどうやってできたのか?どんな役割を果たしたのか?無事に逃れたHarrietは、今度は自分が南部の黒人奴隷をUndeground Railroadを使って助けるようになります。
黒人奴隷を使う習慣は、アメリカ独立のころにはそれほどでもなかったということです。産業革命で綿製品を機械で作るようになって、特に南部で綿花畑で労働力が必要になったので奴隷が使われるようになったと言うことです。
黒人奴隷の解放の歴史に触れることができます。巻末にGlossaryと年表がついています。
「Jackie Robinson Breaks the Color Line」
Jackie Robinsonは黒人で初めて野球選手になった人物です。それまで野球チームは黒人には黒人専用のチームがあり、メジャーリーグには白人しかいませんでした。しかしBrooklin DodgersのBranch RickyはJackieにチームに入ることを勧めます。「The Underground Railroad」と続けて読むと、アメリカの黒人解放の歴史をよりいっそう実感することができます。もちろん、野球が好きな人もどうぞ。
「The Panama Canal」
パナマに運河を作り、太平洋と大西洋を結ぶ…それを実現したのはアメリカでした。アメリカ大陸の支配権争いの歴史から、どうしてアメリカがパナマへ手を出したのかを説き起こします。そして運河を作ったのはアメリカ人だから、運河はアメリカ人のものだと思い続け、パナマの人々はそれを苦々しく思い…。現在に至るまで残り続ける問題です。
「the Spanish-American War」
いわゆる「米西戦争」です。…といっても「なんのこっちゃ」と思う人が多いかもしれませんが…。
そもそもアメリカ大陸発見をしたコロンブスはスペイン政府の援助で船を出しました。その後イギリス人植民者が中心になって独立を果たしましたが、独立したアメリカとスペインとの確執は残り続けました。そして19世紀末、キューバで火がつき、さらにフィリピンにまで飛び火しました。戦争はある日突然始まるものではなく、その前から火種、きざしがあるのです。
結局アメリカが勝利を得たのですが、それは来る20世紀にアメリカが世界を支配する始まりでもありました。
「The Fall of the Soviet Union」
ソビエト連邦の崩壊です。アメリカ史ではありませんが、現代史として押さえておきたいところ。アメリカから見たソビエトの歴史と言うのも面白いものです。
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さて、今回は少々レベルが高めでしたので、ここで子供向けGRから。…と思ったら、全部ICR、しかも3ばかりになりました。
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「The Long Way to a New Land」 ICR3
(自分の書評から)雨が降らず作物が実らなくて、Karl Erikの家は食べるものがなくなります。そこへおじさんから手紙が来ます。おじさんはアメリカにいて、こちらに来ないかと誘います。Karl Erikの両親は話し合いの末アメリカへ渡ることにします。農場を売って旅支度をし、馬車に荷物を積んで旅をして港に着き、船に乗り…旅の様子がていねいに書かれます。ビンボー人の旅は大変です。
「The Long Way Westward」 ICR3
その続編です。(自分の書評から)Carl ErikとJonasの兄弟は両親と一緒にスウェーデンからニューヨークに到着し、ここから列車でおじさんの所へ向かいます。特に意外な出来事は起こりませんが、列車や船を乗り継いでいく旅の様子がていねいに書かれています。挿絵も緻密で19世紀半ばにアメリカへ移民としてやってきた人々はこんなふうだったんだということがわかります。最後はやはりほっとします。
「Clara and the Bookwagon」 ICR3
Bookwagonは今で言う移動図書館です。クララは本を読むのが好きで、Bookwagonが来るのを楽しみにしています。でも当時の農家は仕事がたくさんあって、おとうさんはクララが本を読むのを許してくれません。そういう時代のほのぼのするお話です。
「Sam the Minuteman」 ICR3
独立戦争時代のマサチューセッツ、サムの農場にも兵隊がやってきます。兵隊を前にサムは…。
絵はあのLobelなのですが、戦争の怖さを感じさせるようなまったく別人のような絵です。
「18 Penny Goose,the」 ICR3
独立戦争の時代。Leety Wrightはガチョウを飼っています。しかしイギリス兵が襲ってくる!ガチョウを置いて逃げるわけには行かない!さあどうする?!
といったところで、今回の世界史クラブはここまで。
今はまた中国語に突入しています。次回はいったいいつやら見当もつきません。
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